日本東洋医学雑誌
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臨床報告
重症熱傷に合併したMRSA感染症に対する十全大補湯の使用経験
中永 士師明松永 直子
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2007 年 58 巻 6 号 p. 1127-1131

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抄録

重症熱傷が長期化した場合は創部へのMRSAの感染はもとより肺炎, 尿路感染, カテーテル感染などを合併し治療に難渋することがある。補剤には免疫機構の活性化が期待されるが, 重症熱傷に合併したMRSA感染症に対して補剤を使用した報告はほとんどない。今回, 2例のMRSA感染症に対して十全大補湯を使用し良好な結果を得たので報告する。[症例1] 34歳, 男性。自殺企図にて灯油を頭からかぶり火をつけて85%の火炎熱傷を受傷した。吸引痰よりMRSAが検出され, アルベカシン投与を行うも改善せず, 貧血もみられたため, 十全大補湯の内服を開始した。その後は経過良好で, 受傷後84日目に独歩退院となった。[症例2] 64歳, 男性。自殺企図にて灯油を頭からかぶり火をつけて40%の火炎熱傷を受傷した。受傷12日目, 肺炎および創部敗血症の全身管理目的に当院へ紹介となった。来院時創部より緑膿菌, プロテウス, 大腸菌が, 吸引痰より緑膿菌, クレブシエラ, カンジダが検出された。14病日には吸引痰からMRSAが検出されたため, 十全大補湯の内服を開始した。その後は経過良好で, 125病日目に退院となった。重症熱傷において過大侵襲, 自殺企図, 貧血, MRSA感染症など血・気虚が併発する場合には十全大補湯は全身状態改善に寄与できると思われた。

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© 2007 一般社団法人 日本東洋医学会
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