日本東洋医学雑誌
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臨床報告
癒着性イレウスに小承気湯が奏効した一例
八木 清貴岡 洋志野上 達也井上 博喜中田 真司野崎 和也引網 宏彰後藤 博三柴原 直利嶋田 豊
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2007 年 58 巻 6 号 p. 1133-1137

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抄録

反復する癒着性イレウスに小承気湯 (煎薬) を投与し, イレウス管を挿入することなく早期に改善した症例を経験した。症例は75歳の男性で, 開腹術後の腹部症状のため当科外来に通院していた。腹痛, 腹満を主訴に当科を受診した際, 腹部レントゲン写真上niveauを認めたため, イレウスと診断され入院となった。舌に厚い黄苔を認めたことから, 陽証かつ実証と診断し小承気湯を投与した。一服後40分で転失気があり, 2時間後に排便を認めた。さらに一服後大量の下痢便を認め, 翌日にはniveauは消失した。イレウスは寒によって起こることが多いとされ大建中湯が頻用されるが, 舌に黄苔を被った陽証のイレウスには承気湯類などの寒下剤で下すことで改善する症例もあると考えられた。

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© 2007 一般社団法人 日本東洋医学会
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