日本東洋医学雑誌
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原著
随証漢方療法で生児を獲得した卵巣機能不全不妊症100例の漢方医学的ならびに西洋医学的解析
假野 隆司土方 康世清水 正彦河田 佳代子日笠 久美後山 尚久
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2008 年 59 巻 1 号 p. 35-45

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抄録

目的:不妊症における漢方療法の適応は卵巣機能不全不妊症と考えられる。同疾患に対する集学的不妊治療における,漢方治療の適応を検討した。方法:卵巣機能不全不妊症患者で,随証漢方治療により,妊娠成立し生児を分娩できた漢方妊娠100症例を対象とした。1)漢方医学的診断について,種々の疾患による不妊症症例2737例をコントロール群として比較した。両群の特徴,虚実・陰陽・表裏・寒熱(八綱)・気血水に関する診断結果をカテゴリー別に比較した。2)さらに漢方単独群46例と西洋薬併用群54例に分けて,両群の特徴を比較した。結果:1)漢方妊娠群においてカテゴリー別に多く認められた漢方医学的特徴は虚51例,少陽(半表半裏)69例,上熱下寒52例,気逆47例,お血71例,水毒67例であった。コントロールと比較して,より多く認められた診断は実,太陽,少陽,上熱下寒,お血,水毒であり,表熱裏寒はより少なかった。基本方剤では加味逍遙散が55例と過半数を占めた。2)漢方単独群と西洋薬併用群に卵巣機能不全症の型に差はなかった。妊娠成立までの治療期間は,漢方単独群5.0±4.4カ月,西洋薬併用群9.5±6.8カ月と前者でより短かった。結論:1)妊娠症例には,少陽,上熱下寒,気逆,お血,水毒が多かった。2)漢方療法は単独療法でも重症症例に有効な可能性がある。3)治療6カ月以内に妊娠が成立しない場合は西洋薬の併用を考慮すべきである。4)卵巣機能不全不妊症に対しては随証漢方療法を第一選択とした医療を行うべきである。

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© 2008 一般社団法人 日本東洋医学会
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