日本東洋医学雑誌
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原著
半夏厚朴湯の使用目標とその臨床効果との関連について
─機能性ディスペプシア患者における検討─
及川 哲郎伊藤 剛星野 卓之早崎 知幸高橋 裕子八代 忍五野 由佳理小田口 浩花輪 壽彦
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2008 年 59 巻 4 号 p. 601-607

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抄録

漢方薬を運用する際の臨床的な使用目標の科学的妥当性に関し,消化管機能との関連において記述した報告はほとんどない。我々は以前より,半夏厚朴湯が機能性ディスペプシア(functional dyspepsia=FD)患者の消化管機能に影響を及ぼし,消化器症状を改善させることを報告してきたが,今回半夏厚朴湯の使用目標の有無と消化管機能,消化器症状の関連について検討した。
FD患者における胃排出能は,半夏厚朴湯服用により増加した。このうち,半夏厚朴湯の代表的な使用目標である「咽中炙臠」を有する症例では,「咽中炙臠」のない症例に比べて,胃排出能の有意な増加と消化器症状の有意な改善が認められた。一方腸管ガスについて,腹部単純レントゲン写真から算出した指標gas volume score(GVS)は,FD患者において半夏厚朴湯服用により減少した。このうち,半夏厚朴湯の使用目標のひとつである「腹満」を有する症例においては,「腹満」を認めない症例に比較してGVSの減少が顕著であった。
これらの結果から,FD患者における半夏厚朴湯の臨床効果は,「咽中炙臠」や「腹満」といった伝統的に用いられてきた半夏厚朴湯の使用目標の有無と密接に関連すること,またこれらが科学的妥当性に裏付けられた,漢方処方運用における有用な使用目標である可能性が示唆された。

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© 2008 一般社団法人 日本東洋医学会
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