日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
臨床報告
柴苓湯が奏効したネフローゼ症候群の2例:微小変化型と膜性腎症
小野 孝彦森 典子武曾 恵理
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 60 巻 1 号 p. 73-80

詳細
抄録

ネフローゼ症候群に柴苓湯が奏効した2症例を経験した。症例1は5.2g/日の多量の蛋白尿を呈し,柴苓湯の単独投与を開始し,その後の入院精査にて腎生検による組織型は微小変化型であったが,尿蛋白は入院中に減少し続け,投与開始の2ヵ月後に0.3g/日に至った。外来治療に移行して2.0g/日に増加したものの,再び減少し完全寛解に至った。症例2は8年前にネフローゼ症候群を呈し腎生検で特発性膜性腎症と診断され,少量プレドニゾロン,免疫抑制薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬等の併用にて寛解していたが,経過中,4.4g/日の蛋白尿を呈して再発し,柴苓湯の併用にて4週間後1.3g/日となり,その後寛解した。身体所見および漢方医学的所見として症例1は軽度の胸脇苦満を認め,症例2は中等度の浮腫とともに胸脇苦満も明瞭であった。今回の症例におけるすみやかな寛解経過から,考えうる柴苓湯の作用機序を考察し報告する。

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top