日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
臨床報告
苓姜朮甘湯が有効であった尿失禁の3例
柴原 直利八木 清貴関矢 信康小尾 龍右引網 宏彰後藤 博三嶋田 豊
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 60 巻 5 号 p. 545-550

詳細
抄録

近年,医療においてQOLが重要視されるようになったが,尿失禁は重篤な症状を呈することがないこともあり,治療の普及が遅れている。今回我々は苓姜朮甘湯が奏効した尿失禁の3例を経験したので報告する。症例1は63歳,主婦。30歳頃に発症した腹圧性尿失禁で,腰痛が増悪し,下肢のシビレ感も認めるようになったために当科を受診。当帰芍薬散合人参湯では効果なく,苓姜朮甘湯の投与により改善がみられた。症例2は46歳,主婦。27歳頃に発症した腹圧性尿失禁で,腰痛と尿失禁に対する漢方治療を希望して当科受診。当帰芍薬散加附子により腰痛はやや改善したが尿失禁は不変であり,苓姜朮甘湯への転方により両症状ともに改善した。症例3は70歳,主婦。第12胸椎圧迫骨折に伴う脊髄円錐症候群に起因する膀胱直腸障害,混合性尿失禁と診断された。苓姜朮甘湯の投与により便失禁は消失し,腰痛・尿失禁ともに改善傾向を示した。

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本東洋医学会
前の記事
feedback
Top