日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
原著
子宮下垂症,膀胱下垂症に対するNumerical rating scale(主観的評価)およびBaden-Walker grading(客観的評価)を用いた補中益気湯の臨床的有用性
齋田 あけみ齋田 有紀後山 尚久
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 61 巻 1 号 p. 9-14

詳細
抄録

補中益気湯は子宮下垂症にその升陽挙陥の効果を目的に頻用されてきた。妊娠,出産,閉経等で骨盤の靭帯,結合組織あるいは筋肉が可逆性を失い,下方からの支持のない膣管に子宮が下垂するのが子宮下垂症であり,治療に苦慮する症例がある。
子宮下垂症と診断された17例(62.6±7.1歳)への補中益気湯の投与により,著効,有効,および無効はそれぞれ6例,9例,および2例であり,有効率は88.2%であった。子宮脱矯正用ペッサリーの併用により服薬順守率90%以上の症例では著効率は75%(3/4)であった。有効性スコアーは補中益気湯と骨盤体操併用療法1.5±0.5,ペッサリー併用療法1.4±0.5で,単独療法0.8±0.8に比べ有意に(P<0.05)高かった。補中益気湯の骨盤内筋群への作用に骨盤体操による骨盤底筋への効果や,ペッサリーによる骨盤筋膜(恥骨頸部筋膜,直腸膣部筋膜)の補強効果の相乗作用が子宮下垂症を改善したと推察された。

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top