日本東洋医学雑誌
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臨床報告
桂枝湯が奏効した肩関節周囲炎の1例
中江 啓晴熊谷 由紀絵小菅 孝明
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2011 年 62 巻 1 号 p. 45-47

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抄録

患者は65歳女性,主訴は左肩が痛む。2007年4月から左肩関節痛が出現し,左上肢が挙上困難となった。整形外科で肩関節周囲炎の診断で治療されたが改善はなかった。6月に紹介受診,左肩関節痛と関節拘縮,軽度筋萎縮を認めた。浮,緩の脈で,自然発汗があった。7月から桂枝湯を2週間内服したところ痛みは改善した。3カ月後には左上肢が挙上可能となった。桂枝湯の原典は傷寒論であり,太陽の中風に使用される。本例では典型的な寒気の訴えはなかったが上肢の冷感を悪寒の一部分ととらえ,脈浮,悪寒,関節痛があることから太陽病期と診断した。これに脈緩,自然発汗があることから,桂枝湯証と診断した。桂枝湯は虚証の感冒の初期に使用されるが,慢性疾患に対して用いられることはほとんどない。肩関節周囲炎に対する桂枝湯の使用経験は渉猟しえた範囲では見られなかった。慢性疼痛でも太陽病期であれば,桂枝湯が奏効することが示唆された。

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© 2011 一般社団法人 日本東洋医学会
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