日本東洋医学雑誌
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臨床報告
大桃花湯が潰瘍性大腸炎術後の繰り返す回腸嚢炎に対し有効であった1症例
松浦 恵子徳永 秀明今津 嘉宏西村 甲秋葉 哲生渡辺 賢治
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2011 年 62 巻 6 号 p. 713-717

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抄録

潰瘍性大腸炎では,内科的治療が困難な場合,大腸全摘出術・回腸嚢肛門吻合術が適応になり,回腸嚢炎は,術後のQOLを左右する重要な要因の一つである。繰り返す回腸嚢炎に対して大桃花湯が有効であった一例を報告する。症例は41歳の男性。潰瘍性大腸炎の劇症化により大腸全摘出術・回腸嚢肛門吻合術を施行した。その後,回腸嚢の狭窄,回腸嚢炎を繰り返し,全身疲労倦怠,冷え,下腹部の持続性疼痛や不快感,排便時の激痛を認めた。抗生剤,鎮痛剤でコントロールができないため,当科受診。小建中湯(煎液)の開始により,排便時痛が消失し,黄耆建中湯(煎液)では体力回復が認められた。しかし,その後も回腸嚢炎の発症を繰り返し,柴胡桂枝湯(煎液),補中益気湯エキス,十全大補湯エキスを試したが効果なく,抗生剤の耐性化も認めた。大桃花湯(煎液)へ転方したところ,6ヵ月の内服で回腸嚢炎が軽快し,本方の継続でその後も回腸嚢炎のコントロールは良好である。

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© 2011 一般社団法人 日本東洋医学会
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