日本東洋医学雑誌
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臨床報告
虚労病としての耳管開放症~帰耆建中湯が奏効した5症例
谷村 史子
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2014 年 65 巻 1 号 p. 5-12

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抄録

耳閉感を主訴とした耳管開放症に対して,帰耆建中湯が奏功した5症例を報告する。帰耆建中湯の簡便エキス剤処方として,黄耆健中湯(一日量9 g)と当帰建中湯(一日量7.5 g)の合方を用いた。症例1は73歳男性,高血圧症,脳出血の入院加療歴を認める。感冒罹患後,自声強聴を伴い臥位で改善する両側耳閉感が持続,当院を受診。易疲労感,体重減少,痒笑を伴う腹皮拘急を目標に処方を行い,二週間の服用で耳症状が改善した。本方の追加検討を,症例2,75歳女性,症例3,33歳女性,症例4,78歳女性,症例5,21歳男性の4症例にを行い有効であった。帰耆建中湯は虚労裏急に用いられる小建中湯の発展方である。耳管開放症には,虚労病として帰耆建中湯が勘案されるべき病態が示唆され,治療に際しては養生指導の提供が不可欠である。

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© 2014 一般社団法人 日本東洋医学会
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