日本東洋医学雑誌
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65 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
臨床報告
  • 中江 啓晴, 熊谷 由紀絵, 小菅 孝明
    2014 年 65 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/22
    ジャーナル フリー
    【緒言】眼瞼痙攣(眼瞼攣縮)は眼輪筋,皺眉筋など眼瞼運動に関与する筋肉の不随意の収縮により開瞼が困難となる状態で,局所性ジストニアに分類される。【症例】患者は61歳女性,半年前から出現した眼の違和感を主訴に当科受診。眼瞼痙攣と診断,柴胡加竜骨牡蠣湯の内服を開始したところ改善傾向となり,少量の芍薬甘草湯を追加したところ更なる改善が得られた。患者の希望により芍薬甘草湯を増量し芍薬甘草湯単剤投与に変更したところ症状が悪化,以前の処方に戻したところ改善が得られた。【考察】眼瞼痙攣を含む頭部ジストニアの発症機序として中枢神経系にある基底核運動ループの障害が提唱されている。柴胡加竜骨牡蠣湯は中枢神経系に作用すると推測されることから眼瞼痙攣を改善した可能性がある。【結語】柴胡加竜骨牡蠣湯の眼瞼痙攣に対する有効性が示唆された。
  • 谷村 史子
    2014 年 65 巻 1 号 p. 5-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/22
    ジャーナル フリー
    耳閉感を主訴とした耳管開放症に対して,帰耆建中湯が奏功した5症例を報告する。帰耆建中湯の簡便エキス剤処方として,黄耆健中湯(一日量9 g)と当帰建中湯(一日量7.5 g)の合方を用いた。症例1は73歳男性,高血圧症,脳出血の入院加療歴を認める。感冒罹患後,自声強聴を伴い臥位で改善する両側耳閉感が持続,当院を受診。易疲労感,体重減少,痒笑を伴う腹皮拘急を目標に処方を行い,二週間の服用で耳症状が改善した。本方の追加検討を,症例2,75歳女性,症例3,33歳女性,症例4,78歳女性,症例5,21歳男性の4症例にを行い有効であった。帰耆建中湯は虚労裏急に用いられる小建中湯の発展方である。耳管開放症には,虚労病として帰耆建中湯が勘案されるべき病態が示唆され,治療に際しては養生指導の提供が不可欠である。
  • 矢野 博美, 田原 英一, 山田 靖子, 山内 俊彦, 吉永 亮, 犬塚 央, 久保田 正樹, 平田 道彦, 栗山 一道, 三潴 忠道
    2014 年 65 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/22
    ジャーナル フリー
    58歳男性。20年来の2型糖尿病を放置し,糖尿病足病変を発症した。HbA1c10.8%(JDS)でトリオパチーを合併していた。発症12日後に漢方治療を希望して当科に転院した。右足全体は浮腫状で,第4・5趾間と足背に潰瘍(約7 × 4 cm と 5 × 4 cm)を認め,骨髄炎を合併していた。抗生剤,インスリン,プロスタグランディン製剤とともに,漢方治療は小腹不仁を目標に八味地黄丸料を用い,瘀血を改善する目的で桂枝茯苓丸大量投与(自家製剤2 g × 24丸/日)を7日間行い漸減した。その後,八味地黄丸料を自家製剤に変更し,肉芽形成促進を期待して帰耆建中湯(黄耆20 g)に転方した。経過中に右第5趾の骨が露出したが,潰瘍は退院時(発症50日)に2.5 × 1.8 cmに縮小した。発症約2ヵ月後には潰瘍部分が上皮化して包帯が不要になり,4ヵ月後に治癒した。漢方治療は糖尿病足病変に有効で治癒を早める可能性があると考えた。
  • 大田 静香, 前田 ひろみ, 伊藤 ゆい, 上田 晃三, 吉村 彰人, 土倉 潤一郎, 岩永 淳, 矢野 博美, 犬塚 央, 田原 英一
    2014 年 65 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性,当科受診の1年前に環状肉芽腫症を発症し,トラニラストで改善傾向にあった。しかし肝障害が出現し継続困難となり,皮疹が悪化したため漢方治療を試みることとなった。のぼせ,舌,皮疹の性状から熱候が示唆され,黄連解毒湯を開始し,改善傾向にあったが,入院3日目から治癒が横ばいになった。裏寒の存在を疑い,麻黄附子細辛湯の併用を開始したところ,開始5日目から急速に肉芽の縮小を認めた。臨床的に改善を認めたことより,陽証と陰証の併存があったと考える。
  • 近藤 亨子, 木村 容子, 佐藤 弘
    2014 年 65 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/22
    ジャーナル フリー
    標準的な西洋医学的治療で改善しない痤瘡の症例に対して漢方治療を併用することで改善する場合がある。今回,当帰建中湯が有効であった尋常性痤瘡の2症例を経験したので報告する。症例1は32歳女性で軽症の痤瘡,軟便傾向で下痢しやすく,月経困難症があった。腹診所見では腹部軟弱で臍上悸を認めた。当帰建中湯を投与し便通がよくなるとともに痤瘡も改善した。症例2は26歳女性で中等症の痤瘡があり,軟便傾向で月経困難症があった。腹診所見では胸脇苦満,腹皮拘急を認めた。加味逍遙散,当帰芍薬散で便通異常を来したため,当帰建中湯を投与し痤瘡,便通異常ともに改善した。以上より当帰建中湯は軽症から中等症の痤瘡の症例で便通異常があり,腹診所見では腹部軟弱または腹皮拘急のみられる場合に有効であるのではないかと考えた。2例とも後から薏苡仁エキスを追加し,皮疹のさらなる改善を認めた。
論説
  • 寺澤 捷年, 横山 浩一, 小林 亨, 植田 圭吾, 地野 充時
    2014 年 65 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/22
    ジャーナル フリー
    苓桂五味甘草湯は『金匱要略』所載の方剤であるが,痰飲咳嗽篇に記されているためか,幾つかの成書は咳嗽を使用目的としている。しかし,筆者らはこの方剤が苓桂甘棗湯,苓桂朮甘湯と構成生薬が一味異なっていることから,その応用範囲はより広汎なものではないかと考えた。そこで,顔面の紅潮と下肢の冷えを目標に,鼻周囲発赤,下肢冷感,排尿困難症,脊髄小脳変性症,耳鳴の症例に用いたところ,効果が得られたので,それらの概略を記した。また,この方剤の適応となる病症の容を文献的考察も併せて考察した。
  • 笛木 司, 松岡 尚則, 牧野 利明, 並木 隆雄, 別府 正志, 山口 秀敏, 中田 英之, 頼 建守, 萩原 圭祐, 田中 耕一郎, 長 ...
    2014 年 65 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/22
    ジャーナル フリー
    『傷寒論』成立時代の権衡の考証を目的に,近接した年代に著された『本草経集注』「序録」の権衡を検討した。同書の度量衡は,権衡の記述に混乱が見られ,また度・量についての検証がこれまで十分に行われていなかった。そこで敦煌本『本草経集注』の「1方寸匕に等しい容積の薬升」の記述に着目,同記述が『漢書』「律暦志」の度に従っていることを仮定して計算を行い,1方寸匕の容量として5.07cm3の値を得た。得られた値を生薬の実測数値を用いて検証し,仮定を肯定する結果を得た。得られた1方寸匕の容量から換算した1合の値は『漢書』「律暦志」のそれと一致しており,『本草経集注』「序録」の度量が『漢書』「律暦志」に従っていることが確認された。次いで同書中に記述された蜂蜜と豚脂の密度について実測と計算値の比較を行い,『本草経集注』「序録」中の薬物の記述の権衡は『漢書』「律暦志」に従っていることが明らかになった。
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