日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
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原著
『宋板傷寒論』の権衡の検討
—生薬カスの吸着水量とマオウアルカロイドの煎出効率に着目して—
笛木 司松岡 尚則牧野 利明並木 隆雄別府 正志山口 秀敏中田 英之頼 建守萩原 圭祐田中 耕一郎須永 隆夫長坂 和彦岡田 研吉岩井 祐泉牧角 和宏
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2014 年 65 巻 2 号 p. 61-72

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抄録

『傷寒論』の薬用量は往古から問題とされており,『宋板傷寒論』の1両を現在の何g に換算すべきか,未だ定説が得られていない。江戸時代の狩谷棭斎は『漢書』の権衡(1両=約14g,「常秤」)で秤量した『宋板傷寒論』収載処方が,煎方指定の水量では煎じられないという根拠から「常秤」を否定,「神農之秤」(「常秤」の1/10量)を用いるべきことを主張し,これが現代の漢方薬の処方量の基準となっている。我々は煎じあがりに生薬カスが吸着している水量に着目して検討を行い,『宋板傷寒論』に「常秤」を適用しても煎じ可能なことを実証した。また『宋板傷寒論』及び複数の宋代の医書に記載された麻黄湯方について1回服用分煎液中のマオウアルカロイド量を計算し,宋代の医師達が『宋板傷寒論』の権衡を「常秤」で認識しており,また,「常秤」の換算が臨床的に使用可能であるという結果を得た。『宋板傷寒論』の権衡が「常秤」であることが強く示唆された。

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© 2014 一般社団法人 日本東洋医学会
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