日本東洋医学雑誌
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臨床報告
帰耆建中湯および十全大補湯が無効で補中益気湯が奏効した剥脱性口唇炎の1例
村井 政史伊林 由美子堀 雄森 康明古明地 克英八重樫 稔今井 純生大塚 吉則本間 行彦
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2017 年 68 巻 3 号 p. 227-230

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抄録

症例は31歳の女性で,出産後に上下の口唇に黄白色の痂皮ができ,剥けるようになった。剥脱性口唇炎と診断し,陰証および虚証で,出産後で気血ともに虚した状態と考え帰耆建中湯で治療を開始したが無効で,同じく気血両虚の十全大補湯に転方したが改善せず,胃の調子が悪化した。胃腸への負担が少ない虚証の方剤がよいと考え補中益気湯に転方したところ,口唇の痂皮は著明に改善しほとんど目立たなくなった。剥脱性口唇炎は慢性に持続した炎症性疾患であることから少なくとも口唇の局所は陽証と考えられ,少陽病をもカバーしうる補中益気湯が奏効したものと思われた。また,剥脱性口唇炎には何らかの精神医学的要因が関与している可能性があり,柴胡の解鬱・抗ストレス作用や陳皮の理気・鎮静作用もまた,本症例で補中益気湯が奏効した一因であると思われた。

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© 2017 一般社団法人 日本東洋医学会
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