日本東洋医学雑誌
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論説
『本草経集注』に記載された「桂」の基原を一考する
笛木 司田中 耕一郎牧野 利明松岡 尚則佐藤 忠章小池 一男頼 建守並木 隆雄千葉 浩輝別府 正志須永 隆夫岡田 研吉牧⻆ 和宏
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2017 年 68 巻 3 号 p. 281-290

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抄録

「桂」に類する生薬(以下「桂類生薬」)は,古典医書中,多くの薬名で記述されており,それらの薬名と基原の対応は現在も未解決の問題である。我々は『本草経集注』「序録」の「桂」の長さと重さに関する記述に,先に明らかにした同書の度量衡の換算値を適用することにより,当時「桂」として流通していた生薬は,現在のシナモンスティックに相当するCinnamomum cassia の枝皮(カシア枝皮)であったと強く推測した。推測の妥当性を確認するためカシア枝皮に含まれるケイアルデヒドとクマリンを生薬市場で入手した種々の桂類生薬と定量比較したところ,カシア枝皮中の2成分の含有量は,市場で上品とされる日本薬局方適合ベトナム産ケイヒ(C. cassia の幹皮)と近い値を示し,この推測を支持する結果を得た。C. cassia の幹皮の代わりに枝皮を医薬品として応用できる可能性があると考えられた。

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© 2017 一般社団法人 日本東洋医学会
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