日本東洋医学雑誌
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臨床報告
CO2ナルコーシスを呈した呼吸不全の改善に漢方が奏効した1例
阿南 栄一朗織部 和宏
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2018 年 69 巻 1 号 p. 15-21

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抄録

気道感染後,CO2ナルコーシスを呈したため治療に難渋した症例に大建中湯や人参養栄湯,附子末の加味を行うことで改善した1症例を経験した。症例は,88歳女性。肺結核後遺症,慢性閉塞性肺疾患があり,チオトロピウム,ブデソニド吸入,ツロブテロール貼付を行っていたが,発熱後,呼吸困難が持続し,当院へ救急搬送された。CO2ナルコーシスになっていたため人工呼吸管理を勧めるものの高齢を理由に拒否され,呼吸困難や軽度の意識低下が遷延した。そこで,大建中湯,人参養栄湯,附子末を段階的に加味したところ,呼吸困難,便秘,食欲不振,意識低下の改善,動脈血中CO2濃度の低下,Ph の正常化をみた。慢性呼吸不全が悪化し,CO2ナルコーシスを生じた場合,人工呼吸管理を行うことは第一選択である。しかし,本症例のように,医療処置を拒否され治療継続困難となる場合,呼吸不全の改善に漢方を投与することで症状緩和につながる場合がある。

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© 2018 一般社団法人 日本東洋医学会
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