日本東洋医学雑誌
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原著
水質がウズ煎液中のアコニチン型ジエステルアルカロイド量に及ぼす影響
笛木 司吉田 理人田中 耕一郎千葉 浩輝加藤 憲忠並木 隆雄柴山 周乃藤田 康介須永 隆夫松岡 尚則別府 正志牧野 利明
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2018 年 69 巻 4 号 p. 336-345

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抄録

中国天津市及び上海市の上水道水を用いて「ウズ」の煎液を調製し,煎液中のアルカロイド量を,新潟市上水道水を用いた場合と比較した。中国の上水道水を用いて調製した煎液中のアコニチン型ジエステルアルカロイド(ADA)量は,新潟市上水道水を用いた場合に比べ有意に少なく,この原因として,中国の上水道水に多く含まれる炭酸水素イオンの緩衝作用によりウズ煎煮中のpH 低下が抑制されることが示唆された。また,ウズにカンゾウ,ショウキョウ,タイソウを共煎した場合,ウズ単味を煎じたときと比較して煎液中ADA 量が高値となり、さらにこの現象は中国の上水道水で煎液を調製した場合により顕著に観察された。煎じ時間が一定であっても,用いる水や共煎生薬により思わぬADA 量の変化を生じる可能性が示唆された。また『宋板傷寒論』成立期の医師たちが,生薬を慎重に組み合わせて煎液中のADA 量を調節していた可能性も考えられた。

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© 2018 一般社団法人 日本東洋医学会
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