2018 年 69 巻 4 号 p. 366-373
透析患者は下肢有痛性筋痙攣を発症しやすく,芍薬甘草湯は有効であり,頓服として処方している。一方,治療当初に有効な芍薬甘草湯が次第に効果を減弱し,無効となる症例を経験するようになった。五臓論において筋痙攣は肝の失調状態であると考えられ,疏肝作用がある柴胡と芍薬を含む柴胡桂枝湯を投与した。その結果,10症例中9例の有効性を経験した。透析患者の下肢有痛性筋痙攣は,少陽枢機の開閉が失調することによる「定刻における周期性発作(=休作時有)」を来し,かつ陰陽不順接による症候である「陰陽(=自律神経)の失調」によって生じると考えられた。柴胡桂枝湯は少陽枢機の失調を整える小柴胡湯と,陰陽のバランスを調和する働きを有する桂枝湯の2方剤からなる処方であり,この両者の証を併せ持っている。透析患者の独特な生活リズムによって生じる下肢有痛性筋痙攣に柴胡桂枝湯は有効であったと判断される。