日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
臨床報告
十味剉散で痛みが軽減した線維筋痛症の1例
宮西 圭太平田 道彦織部 和宏
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 71 巻 2 号 p. 102-107

詳細
抄録

線維筋痛症は西洋医学的には薬物治療が中心的に行われるが,その効果はときに限定的であり,日常生活に支障を来たす痛みが遷延する症例が少なくない。本報告では十味剉散により痛みが緩和した線維筋痛症の1症例を報告する。28歳女性。4年前より左上腕部の痛みが出現し,2年前より痛みが全身に拡大した。左上腕部の痛みがとくに強く「うでを下げているだけでも響く」と表現された。ほかに疲労感,頭痛,動悸など多彩な症状を併発した。 古典の記載から,血虚の症候および上肢の重さに耐えられないほどの上腕部の激痛,歩行困難を目標として十味剉散(煎じ漢方)を投与したところ,3ヵ月後には痛みは半分以下まで改善した。線維筋痛症に対してこれまでに様々な漢方薬の有効性が報告されているが,十味剉散の報告は少ない。痛みの漢方治療において「血虚,上腕痛,歩行困難」を呈する症例において,十味剉散は鑑別すべき方剤として考慮されてよいと考える。

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top