日本東洋医学雑誌
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71 巻, 2 号
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原著
臨床報告
  • 加藤 果林, 上田 真帆, 植月 信雄, 谷川 聖明
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年71 巻2 号 p. 90-93
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/07
    ジャーナル フリー

    群発頭痛の発作軽減に十全大補湯が奏効した症例を経験した。症例は39歳男性で,7年前より群発頭痛の発作があり,症状は激烈で片側眼の視力低下を伴った。発作時トリプタン製剤や消炎解熱鎮痛剤は無効で,その発作の持続時間が長く頻回となったためペインクリニック外来を受診した。皮膚乾燥などの全身所見より気血両虚と考え十全大補湯の内服を開始し,3ヵ月内服を継続したところ頭痛の頻度と程度は軽減した。群発頭痛の病態は未だ明確には解明されておらず,器質的要因を特定できない疼痛は西洋医学的に解決が困難なことが多いが,西洋医学には無い「陰陽虚実」や「気血水」「五臓論」などの東洋医学的観点から痛みを解析し,その証に応じた漢方薬を処方することで痛みの軽減につながることがある。

  • 田原 英一, 後藤 雄輔, 吉永 亮, 井上 博喜, 矢野 博美
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年71 巻2 号 p. 94-101
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/07
    ジャーナル フリー

    四物湯を含む処方が奏功した6例を経験した。症例1は13歳男性で起床困難であったが,集中力低下を目標に治療したところ,通学も可能になった。症例2は18歳女性で,起床困難だったが,同じく通学が可能になった。症例3は10歳女性で,治療により部分的に通学可能となった。症例4は42歳男性で,社交不安に対して四物湯を追加したところ改善した。症例5は多愁訴であったが,四物湯を含む処方で症状が軽減した。症例6は56歳女性で同じく多愁訴であったが,四物湯を含む処方で症状が軽減した。いずれの症例もうつ,不安が明らかであり,4例でコルチゾールの低下を認め治療により回復した。四物湯は血虚を治療することで集中力,判断力を回復し精神症状を改善すると考えられる。

  • 宮西 圭太, 平田 道彦, 織部 和宏
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年71 巻2 号 p. 102-107
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/07
    ジャーナル フリー

    線維筋痛症は西洋医学的には薬物治療が中心的に行われるが,その効果はときに限定的であり,日常生活に支障を来たす痛みが遷延する症例が少なくない。本報告では十味剉散により痛みが緩和した線維筋痛症の1症例を報告する。28歳女性。4年前より左上腕部の痛みが出現し,2年前より痛みが全身に拡大した。左上腕部の痛みがとくに強く「うでを下げているだけでも響く」と表現された。ほかに疲労感,頭痛,動悸など多彩な症状を併発した。 古典の記載から,血虚の症候および上肢の重さに耐えられないほどの上腕部の激痛,歩行困難を目標として十味剉散(煎じ漢方)を投与したところ,3ヵ月後には痛みは半分以下まで改善した。線維筋痛症に対してこれまでに様々な漢方薬の有効性が報告されているが,十味剉散の報告は少ない。痛みの漢方治療において「血虚,上腕痛,歩行困難」を呈する症例において,十味剉散は鑑別すべき方剤として考慮されてよいと考える。

  • 遠藤 大輔, 及川 哲郎, 花輪 壽彦, 小田口 浩
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年71 巻2 号 p. 108-114
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/07
    ジャーナル フリー

    北里大学東洋医学総合研究所において初診時に四逆散(四逆散料または四逆散エキス)を処方された患者86名のうち,有効であったと判断した41症例について後方視的に診療録の調査を行った。古典では胸脇苦満と腹直筋攣急の腹診所見や四肢の冷えの存在が重要視されている。我々の検討においても,胸脇苦満は90%以上,腹直筋攣急は60%以上の患者に認め,四逆散処方の根拠として重要視されていることが確認できた。一方で冷えの存在については,過半数の患者が自覚的な冷えを訴えているものの,他覚的所見として担当医が冷えの存在を診療録に記載しているのは約20%に過ぎなかった。従来,処方名にある四肢の冷えが重要と考えられてきたが,今回の検討では診察上冷えの所見を認めなくとも本方は応用されていることが明らかとなった。

  • 諸橋 弘子, 柳瀬 徹, 笛木 司, 山崎 一郎, 須永 隆夫
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年71 巻2 号 p. 115-120
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/07
    ジャーナル フリー

    皮膚疾患に罹患している女性が妊娠した場合,それまでの西洋薬および漢方薬の内服を中止して外用薬のみによる治療となり症状が増悪することが多い。一方,当帰芍薬散は妊娠中も内服可能な方剤として知られており,妊娠中の種々の症状の改善に用いられる。
    今回,皮膚疾患に罹患していた患者が妊娠した際に,すべての内服薬から当帰芍薬散に変更して良好な成績を得た症例を経験した。症例1と症例2はアトピー性皮膚炎の患者で,外用薬だけで治療に苦慮した症例。症例3は妊娠性痒疹の患者で,上肢体幹に皮疹を認めた。症例4は尋常性ざ瘡の患者。4症例とも当帰芍薬散の内服にて皮疹が速やかに改善し正常分娩に至った。悪心などの胃部症状の副作用は全症例とも認めなかった。
    慢性化した皮膚疾患は血虚,瘀血の状態であり,妊娠により気虚,水毒が加わり,陰虚湿盛の状態になり,当帰芍薬散が有効な証になったために奏効したと想定された。

  • 森 瑛子, 及川 哲郎, 小田口 浩, 花輪 壽彦
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年71 巻2 号 p. 121-126
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/07
    ジャーナル フリー

    女神散は「血の道症」に対して使用される処方であるが,婦人科三大処方と呼ばれる当帰芍薬散,加味逍遙散,桂枝茯苓丸と比較すると使用頻度は低く,多数例における使用経験をまとめた報告は少ない。そこで今回女神散の臨床応用に役立つ使用目標を明らかにするため,当施設で過去5年間に女神散を処方された症例のカルテを後方視的に検討した。その結果,女神散が有効な患者は身体的・精神的ストレスを背景とする気の異常と瘀血を伴う一方,水滞の兆候は認めないことが多かった。これらの所見は,女神散の効果的運用に役立つと考えられた。

  • 渡邊 善一郎, 中田 薫, 菅原 健, 鶴田 統子, 原 典子, 浅野 伸将, 山田 創吾, 土地 邦彦
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年71 巻2 号 p. 127-130
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/07
    ジャーナル フリー

    寒滞肝脈とは肝の経絡に寒邪が侵入して疼痛を発症する病態である。下痢後の寒い住宅環境の原因により,肝の経絡に一致した下肢痛で歩行困難にまで至った7歳男児を経験したので報告する。西洋医学の血液検査・MRI 検査では異常を認めなかった。治療原則は温経止痛で行い,温経止痛に働く煎じ薬「暖肝煎加味方」を選択したところ,症状は軽快した。そして,身体を温める入浴療法は診断としても有効であった。我々が調べた限りでは寒滞肝脈の小児報告例はみつからなかったが,冷房の普及した日本では,寒滞肝脈の症例が潜在しているものと考える。

  • 野上 達也, 久永 明人, 金原 嘉之, 渡り 英俊, 藤本 誠, 柴原 直利, 嶋田 豊
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年71 巻2 号 p. 131-136
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/07
    ジャーナル フリー

    烏頭赤石脂丸は金匱要略に「心痛徹背背痛徹心烏頭赤石脂丸主之」とある処方である。今回,本処方が有効であった3症例を経験したため報告した。症例1は53歳男性で,右前腕切断後に生じた前胸部痛に対して本処方を用いて奏効した。症例2は46歳男性で冷食後に生じた心窩部痛,症例3は28歳女性でパニック障害に伴う心窩部痛にそれぞれ本処方を用いた。いずれの症例も腹候に心下痞鞕を認めた点と裏寒の存在は本処方の使用目標の一つとなると考えられた。烏頭赤石脂丸の使用報告は少なく,適応病態は明らかではないが,高度の胸痛,腹痛の治療時には考慮すべき処方であると考える。

  • 北原 英幸, 野上 達也, 渡り 英俊, 金原 嘉之, 藤本 誠, 柴原 直利, 嶋田 豊
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年71 巻2 号 p. 137-142
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/07
    ジャーナル フリー

    症例は42歳女性。1年前から月に1—2回,呼吸困難,恐怖感,手の硬直などを伴うパニック発作があり,多忙時や月経期間に生じやすく,他院から処方された加味逍遥散エキスと甘麦大棗湯エキスが有効であったが,自動車の接触事故後に今まで以上に強い発作が出現したため当科を受診した。血液検査,画像検査等で特記所見なくパニック症と診断。奔豚気と捉えて苓桂甘棗湯を処方し,2週間後から気分の改善と発作症状の軽減を得たが,仕事が多忙となった2ヵ月後から週1—2回発作が再発した。前駆症状として後頸部の異常感覚が生じ,同時期に頸部痛,頸部の凝りが増悪することを考慮して桂枝去桂加茯苓白朮湯に転方したところ,後頸部の異常感覚が消失し,以後,発作は出現せずに経過した。頸部の不調がパニック発作の出現と関連する場合,桂枝去桂加茯苓白朮湯が発作予防に有効な方剤と考えられた。

  • ~要因別(神経障害,血流障害,感染合併)足病変に漢方薬が有効であった外来患者13例と入院患者4例の検討から~
    丹村 敏則
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年71 巻2 号 p. 143-153
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/07
    ジャーナル フリー

    糖尿病足病変の主な成因の神経障害,血流障害,感染の3つの要因に対して早期からの対策が必要とされる。この3大要因から糖尿病患者の足病変に対して,糖尿病外来患者13例,入院患者4例に漢方薬治療を実践したところ50~100%に有効性が認められた。A群(明らかに神経障害の存在が考えられる群)に対しては証に応じた漢方薬治療が50%以上に有効であった。B群(明らかに血流障害の存在が考えられる群)については循環を改善する漢方薬,とくに当帰四逆加呉茱萸生姜湯は,足関節血圧比(ankle-brachial pressure index : ABI)を改善した。また,C群(明らかに感染を合併するが内科で対応可能な群)については,西洋医学的な抗菌薬と併用で,漢方薬(補剤)が全身状態を改善した。

論説
  • 小池 宙, 堀場 裕子, 渡辺 賢治
    原稿種別: 論説
    2020 年71 巻2 号 p. 154-161
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/07
    ジャーナル フリー

    [緒言]大黄牡丹皮湯の『金匱要略』の条文には「小便自調」と記されているが,現代日本漢方では「小便不利」を目標に使用する傾向がある。その違いを検討するために古典における大黄牡丹皮湯使用時の,「小便」や「淋」や「腸癰」を中心とした使用目標について調査した。[方法]現存する宋改以前または宋改時の古医書に存在する大黄牡丹皮湯に関連する記述を検索し,比較・検討した。[結果]『金匱要略』系の書は「小便自調」と記していたが,それ以外の書は『諸病源候論』の「小便数似淋」のように頻尿になると記していた。また『金匱要略』系と『医心方』以外の書には,『諸病源候論』の「小便或難」のように排尿しにくくなることもあるという記載もあった。[考察]宋代以前の複数の古医書を検討すると,大黄牡丹皮湯が有効な症例の多くは頻尿となるが,一部の症例では尿が出にくくなることもあると書かれていた。

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