日本東洋医学雑誌
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臨床報告
妊娠中の皮膚疾患(アトピー性皮膚炎,妊娠性痒疹,尋常性ざ瘡)に当帰芍薬散が奏効した4症例
諸橋 弘子柳瀬 徹笛木 司山崎 一郎須永 隆夫
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2020 年 71 巻 2 号 p. 115-120

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抄録

皮膚疾患に罹患している女性が妊娠した場合,それまでの西洋薬および漢方薬の内服を中止して外用薬のみによる治療となり症状が増悪することが多い。一方,当帰芍薬散は妊娠中も内服可能な方剤として知られており,妊娠中の種々の症状の改善に用いられる。
今回,皮膚疾患に罹患していた患者が妊娠した際に,すべての内服薬から当帰芍薬散に変更して良好な成績を得た症例を経験した。症例1と症例2はアトピー性皮膚炎の患者で,外用薬だけで治療に苦慮した症例。症例3は妊娠性痒疹の患者で,上肢体幹に皮疹を認めた。症例4は尋常性ざ瘡の患者。4症例とも当帰芍薬散の内服にて皮疹が速やかに改善し正常分娩に至った。悪心などの胃部症状の副作用は全症例とも認めなかった。
慢性化した皮膚疾患は血虚,瘀血の状態であり,妊娠により気虚,水毒が加わり,陰虚湿盛の状態になり,当帰芍薬散が有効な証になったために奏効したと想定された。

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© 2020 一般社団法人 日本東洋医学会
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