寒滞肝脈とは肝の経絡に寒邪が侵入して疼痛を発症する病態である。下痢後の寒い住宅環境の原因により,肝の経絡に一致した下肢痛で歩行困難にまで至った7歳男児を経験したので報告する。西洋医学の血液検査・MRI 検査では異常を認めなかった。治療原則は温経止痛で行い,温経止痛に働く煎じ薬「暖肝煎加味方」を選択したところ,症状は軽快した。そして,身体を温める入浴療法は診断としても有効であった。我々が調べた限りでは寒滞肝脈の小児報告例はみつからなかったが,冷房の普及した日本では,寒滞肝脈の症例が潜在しているものと考える。