日本東洋医学雑誌
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総説
ウイルス感染症のパンデミックに対して漢方薬の果たす役割—スペインかぜから学ぶ—
入江 康仁中永 士師明
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2020 年 71 巻 3 号 p. 272-283

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抄録

世界的な流行を呈している新型コロナウイルスに対して,世界中でその対策が進められている。人工呼吸器や体外式膜型人工肺の導入が行われ,また抗ウイルス薬の投与なども試みられている。しかし,現在のような情勢の中で,エビデンスのある有効な治療を待つわけにもいかず,日々対応していかなくてはならないのもまた事実である。 抗ウイルス薬はもちろん,抗菌薬や人工呼吸器などの医療器具のなかったスペインかぜ流行当時,本邦の先人たちがどのような診療をしたのかを顧みることは大変参考になる。本稿はスペインかぜに対して漢方薬を駆使して患者を治療した事実と,現在明らかとなったスペインかぜの高病原性,抗ウイルス薬の作用機序と臨床エビデンスを示しながら,ウイルス感染症のパンデミックに対する対策の一つとして臨床上も比較的安全であり,副作用も少なく,自己免疫賦活作用による抗ウイルス作用を期待できる漢方薬の役割を提言するものである。

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© 2020 一般社団法人 日本東洋医学会
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