2021 年 72 巻 1 号 p. 9-12
症例は28歳男性で,14歳の冬に嘔吐下痢症にかかり,その後から時々胃もたれや胸やけが出現するようになった。 最近の2~3年間は常に食欲がなく,何を食べても胃もたれや胸やけが悪化し,ひどくなると動悸がしたり手足が冷たくなったりした。また,排便は1~2日に1回程度で,排便時には腹痛を伴う下痢を認めた。これらの症状は,機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群を合併した機能性消化管障害であると思われ,当初六君子湯を基本とした柴芍六君子湯を投与したが無効で,小建中湯がある程度有効,そして小建中湯に大建中湯を合方した中建中湯が更に効果的であった。本症例では,気虚が主な原因ではなかったため柴芍六君子湯が無効で,過緊張により気うつが生じたため中建中湯が有効であった可能性が考えられた。