日本東洋医学雑誌
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臨床報告
腹満に対して当帰四逆加呉茱萸生姜湯が奏効した2症例
辻 正徳地野 充時寺澤 捷年
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2022 年 73 巻 1 号 p. 67-73

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抄録

腹満は日常臨床でしばしば見られる徴候の一つであり,腹痛や食欲不振を伴って生活の質を低下させる原因となりうる。西洋医学では,器質的異常に対する治療法はあるが,殊に機能性腹満に関してはしばしば治療に難渋する。 腹満に対する漢方の報告はあるが,調査した範囲で当帰四逆加呉茱萸生姜湯の治験例は見られなかった。今回我々は,当帰四逆加呉茱萸生姜湯による随証治療が腹満に奏効した2症例を経験した。症例1は頻回の噯気を伴う86歳女性,症例2はオピオイド内服中の59歳男性の症例であった。いずれも理気薬の効果に乏しく,四肢厥冷,腹部の冷え,鼠径部の圧痛から,当帰四逆加呉茱萸生姜湯証と判断した。同湯の投与にて症例1では腹満感の減少に伴って噯気の頻度の減少,食欲増進を認め,症例2では更に呉茱萸の増量等を行うことで腹満の改善を認めた。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は裏寒証を伴う腹満に対して奏効する可能性が示唆された。

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