日本東洋医学雑誌
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酸棗仁湯の奏効した嗜眠傾向の一症例
谷川 久彦遠田 裕政岡本 洋明森山 健三
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1986 年 37 巻 2 号 p. 91-94

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抄録

酸棗仁湯が嗜眠傾向に対して有効であった1症例につき報告した。患者は52歳の主婦で体格は小さく痩せており, いつも身体が疲れていて, 夜は十分眠れるのに昼間もなお眠く感じ, ともすれば横になり眠ってしまうような嗜眠傾向の状態であった。腹力はやや軟で臍上に動悸と臍傍に圧痛点を認めた。
初め, 当帰芍薬散料加附子と酸棗仁湯を交互に服用させたが, 後には, 酸棗仁湯を主として, 当帰芍薬散を兼用とした。約2ヵ月余で, 嗜眠傾向は全く改善された。
すでに報告した酸棗仁湯で有効な不眠症の2症例をも考慮してみると, 酸棗仁湯は不眠にも嗜眠にも有効であることが確かめられた。また, 不眠や嗜眠に対して, 酸棗仁を妙る妙らないは必ずしも関係なく, むしろその成分が煎液によく出ることが必要なのではないかと思われる。

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