日本東洋医学雑誌
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夜尿症の発症機序からみた漢方治療
竹谷 徳雄
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1989 年 39 巻 3 号 p. 185-190

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抄録

機能的夜尿症と考えられる62例に漢方随証治療を行った。頻尿が著明でない尿保持群20例において85%の有効率を示し, 全例に何らかの効果を認めた。一方, 頻尿を認める自発覚醒群10例, 夜尿群27例においては無効例がそれぞれ20%, 40%にみられ, 何らかの併用療法を必要とし, 難治な例がみられた。漢方方剤として葛根湯, 麻杏甘石湯, 越婢加朮湯, 柴胡桂枝湯, 桂枝加竜骨牡蛎湯, 小建中湯, 甘麦大棗湯を多用した。特にどの方剤が有効ということではなく, 病型に左右された。しかし越婢加朮湯については有効例がなく, 証の取り違いが考えられた。夜間覚醒困難を麻黄剤の証の一部に取り入れて用いたが, 有効率が他と変らず妥当であったと思われる。漢方治療は副作用が少なく, 長期にわたって容易に継続でき, かつ精神的・肉体的ストレスを和らげて目覚めやすくし, 頻尿も改善するので有用な治療法であると結論できる。

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