日本東洋医学雑誌
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過敏性腸症における香蘇散証の一考察
土佐 寛順栗林 秀樹寺澤 捷年檜山 幸孝松田 治己
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1990 年 41 巻 2 号 p. 77-86

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抄録

過敏性腸症に対する香蘇散の使用目標を明確にするため, 本方が有効であった過敏性腸症10症例につき, その自覚症状, 漢方医学的症候, 注腸造影所見について検討した。その結果, (1) 間歇的な腹痛や腹満がある。(2) 顔色は青白いが若干の上衝傾向がみられる。(3) 皮膚は軽度に粗造である場合が多い。(4) 脈は弦やや弱。(5) 腹力は中等度よりやや軟。(6) 心下部 (剣状突起直下) の圧痛。(7) 腹動 (臍上悸, 臍下悸) が明らか。(8) 右に軽度の胸脇苦満。(9) 腹直筋の緊張は原則としてみられない。(10) 軽度の臍傍圧痛を右に認めることが多い。(11) 便通による分類からは不安定型に有効。(12) 注腸造影所見では脾彎曲・肝彎曲の屈曲が強く, 収縮が高度である。以上の12項目が本証として示唆された。また, 過敏性腸症の治療に香蘇散が適応となるものがあることを, はじめて報告した。

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