日本東洋医学雑誌
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寝たきり老人に黄耆建中湯が奏効した二例
川俣 博嗣土佐 寛順寺澤 捷年
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1996 年 47 巻 2 号 p. 253-260

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抄録

寝たきり老人に黄耆建中湯を投与したところ, 著明に日常生活動作 (ADL) の拡大を得た2症例を経験した。症例1は76歳の女性。くも膜下出血で約5ヵ月間の入院により, 寝たきりとなった。入院時は両下肢に麻痺と廃用性萎縮を認め, 意欲の低下は著明であった。証に随い小建中湯を投与したが, 効果がなかったため, 黄耆建中湯に転方。徐々に意欲の上昇が得られ, 著明なADLの拡大を得た。症例2は86歳の女性。腰椎圧迫骨折で1年間寝たきりの状態が続いた。黄耆建中湯の投与で意欲の上昇が得られ, 積極的にリハビリテーションを取り組むようになった。この結果, 座位が可能となり, 杖歩行で退院となった。寝たきり老人の病態は, 虚労状態と考えられる。気力・体力の低下した寝たきりの老人に対して, 本方で著効が得られたことは高齢者医療における漢方医学の寄与を具体的に示す一つの事例であると考え報告した。

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