日本東洋医学雑誌
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輸液後に腹部膨満感を訴えた太陽病と少陽病の併病の1例
白尾 一定愛甲 孝
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1998 年 49 巻 1 号 p. 29-34

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抄録

輸液にて腹部膨満感を訴えた太陽病と少陽病の併病を経験した。62歳の女性で主訴は, 輸液後の腹部膨満感, 全身倦怠感, 頭重感と耳鳴りである。悪寒, 発熱, 頭痛の太陽病の症状と眩量や口苦咽乾および心下痞鞭の少陽病の症状を伴うことより太陽病と少陽病の併病と診断した。輸液を中止し柴苓湯を投与した結果, 全身倦怠感の消失, 食欲の回復, 心下痞鞭の改善および体重減少が認められた。嘔気や上腹部圧迫感は柴胡桂枝湯が奏功し, 笑顔と活力がみられ旅行に行くまで回復した。足腰の冷えと痛みは, 当帰四逆加呉茱萸生姜湯が奏功した。栄養補給や脱水の治療として輸液がなされるが, かぜ症候群の輸液療法の適応には注意が必要である。

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