漢方医学的脈候, 舌候, 腹候の関連性を明らかにするため, 人間ドック受診者488例を用いて検討した。併せて, 喫煙, 飲酒の脈候, 舌候, 腹候に及ぼす影響, また血液生化学検査所見と脈候, 舌候の関連性について検討し, 以下の結果を得た。
1) 実脈では腹力, 小腹腹壁緊張度は上昇しており, 臍上悸, 振水音を認める頻度は少ない。
2) 大脈では腹力は上昇し, 臍下悸は触れにくい。
3) 左右臍傍の圧痛が強まると〓点を伴うことが多い。
4) 心下悸は横裂と正の相関を示した。
5) 左臍傍の圧痛と紫舌の程度は正の相関を認めた。
6) 喫煙者は紅あるいは紫舌になりやすく, 黄苔, 厚苔, 膩苔を呈す傾向にあった。腹候では, 喫煙数と左腹直筋緊張度で正の相関がみられた。
7) 飲酒量と腹力は正の相関を示し, 臍上悸の程度と負の相関を示した。
8) ヘモグロビン値, ヘマトクリット値は紅舌, 紫舌, 〓点, 厚苔を示した場合は上昇し, 痩薄になると低下した。
9) アミラーゼ値は紅舌, 厚苔, 点刺, 膩苔と負の相関がみられた。
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