日本東洋医学雑誌
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腸管出血性大腸菌感染症モデルマウスに対する補中益気湯の免疫調節作用
清水 昌寿小松 靖弘王 秀霞劉 北星武田 素廣松井 健一郎甲野 裕之山口 宣夫
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1998 年 49 巻 3 号 p. 429-439

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抄録

免疫抑制剤であるデキサメサゾン (Dex) を投与して作製した免疫不全モデルのマウスに補中益気湯 (HET) を経口投与して, 腸管出血性大腸菌 (EHEC) の腹腔内感染に対する感染防御効果を検討した。
HETの経口投与はDex処理により誘導された末梢血白血球数の減少を回復した。またDex処理により低下した羊赤血球への能動免疫能に対するHETの回復作用を溶血斑形成細胞(PFC) 数により検討した結果, HETの経口投与によりIgM型PFCがDex非処理の正常群のレベルまで回復された。そこで, Dex処理マウスのEHEC感染モデルにおいてHETの感染防御効果を検討した。HETを500mg/kg/headで経口投与した結果, 生存日数の延長がみられ, 50%生存日数はHET投与群において4日であったがHET非投与群のそれは1日であった。また, HET投与群では対照群と比較して感染後の肝臓内菌数が低く抑えられた。
以上の結果より, Dex投与マウスのEHEC感染モデルにおいて, HETの経口投与が感染防御能を増強した。この増強効果はHETがDex投与により誘導された免疫不全状態を改善させる作用に基づいて発揮されることが示唆された。

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