日本東洋医学雑誌
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高齢者糖尿病に対して麻子仁丸ならびに八味地黄丸が有効であった2症例
松井 龍吉下手 公一河野 直人豊田 元哉今岡 かおる小林 祥泰寺澤 捷年
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2001 年 51 巻 4 号 p. 733-739

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抄録

インスリン治療中の糖尿病患者に対し, 麻子仁丸, 八味地黄丸を投与したところインスリン投与量を減量, 中止できた2症例を経験した。症例1はペンフイル30Rを朝16単位投与にて治療中, 便秘症状の改善を目標に麻子仁丸の投与を開始したところ, 血糖値の低下を認め最終的にはインスリンが中止となった。症例2は, 当院入院時ペンフイルN朝16単位にて治療されていたが麻子仁丸, 八味地黄丸投与開始後, 徐々に血糖値が低下。最終的にはインスリンモノタード4単位にて血糖値の安定化がみられた。
麻子仁丸は通常, 高齢者の便通異常に対し投与されることが多く, 血糖値に対し影響を与えたとの報告はない。本症例においては便通の正常化とともに血糖値が変化しており, 糖尿病に有効であったと判断された。また高齢者の糖尿病治療においても低血糖等の症状を防ぐという点でその有用性が示唆された。

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