日本東洋医学雑誌
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虚血性心疾患と漢方方剤に関する研究 (II)-柴胡加竜骨牡蛎湯の心筋梗塞巣制限化についての検討-
山田 勉生沼 利倫吉村 信
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2002 年 52 巻 4-5 号 p. 483-492

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抄録

これまでに心筋梗塞動物モデルにおける漢方方剤の影響を報告してきたが, とくに柴胡加竜骨牡蛎湯の心筋梗塞巣・拡大阻止に及ぼす影響を明らかにするため, 最終的に実験群として10頭を検討した。雄性ブタの左冠動脈前下行枝 (LAD) の末梢に, 経カテーテル的に自家製金属コイルを塞栓として挿入して, 梗塞を発症させた。その後, 実験群は柴胡加竜骨牡蛎湯エキス末 (0.66g/kg/day, n=10) を造設した胃痩から投与し, 4週間飼育した。対照群は, 同様に経カテーテル的にLAD内に自家製金属コイルを挿入して, 基本食のみで4週間飼育した (n=9)。4週後に心臓を全割面標本として, 梗塞巣と非梗塞巣との重量を計測し, さらに梗塞巣について組織学的検討も加えた。
実験群の心重量に対する梗塞巣の割合 (2.9±1.6%, n=10) は対照群梗塞巣の心重量に対する割合 (8.2±4.8%, n=9) よりも有意に低下した。さらに左室重量に対する梗塞巣の割合についても, 実験群 (4.9±2.6%) は対照群 (13.4±8.0%) よりも有意に低下した。よって実験群梗塞巣領域は対照群梗塞巣よりも縮小した。組織学的に対照群梗塞巣と境界領域の炎症細胞浸潤像は高度であり, 実験群梗塞巣は線維化で置換され炎症細胞も少なかった。実験群梗塞巣と境界領域における小血管も対照群より増生していた。以上より, 柴胡加竜骨牡蛎湯は動物モデルにおける梗塞発症後の梗塞巣の進展・拡大を阻止すること, すなわち梗塞巣を制限化することが示唆された。

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