抄録
傷寒論, 金匱要略において, 振り出し薬として唯一記載されているのは, 傷寒論の大黄黄連瀉心湯である。振り出し薬とした意味は, 緊急性が要求されているからであろうと思われる。筆者は, 大黄, 黄連, 黄苓三味の瀉心湯の振り出し薬を当院受診の高血圧患者32名 (男性5名, 女性27名) に使用し, 服用前, 服用後30分間経時的に血圧測定した。その結果, 収縮期圧10mmHg以上の降圧効果は, 全体の68.8%であった。平常時, 陽実証と思われない人においても降圧効果があった。今回の投与において, 下痢をした人はいなかった。振り出し薬は瀉下作用よりも, 鎮静作用が強調されていると思われた。緊急的に血圧上昇した場合の降圧剤として有用と思われる。