気逆により安静時に動悸を訴える症例に対して原典処方より芍薬を去方するか, または芍薬非含有方剤で動悸が速やかに消失した5症例を経験した。これらの症例に共通する点は季肋下部から恥骨上縁に至るまでの全腹部にわたって腹直筋の攣急が存在しないことと, 心下悸, 臍上悸または臍下悸などのいずれかの腹動を認めることが明らかになった。特に勺薬含有方剤に転方した際に, これまで観察されなかつた安静時の動悸が新たに出現し気逆の異常が基礎にある場合は, 去芍薬とすることで動悸の改善する症例が多数存在することが新たに示唆された。