抄録
持続的な森林保全にむけて重要な非木材林産物としてサトウヤシ(Arenga pinnata)砂糖をインドネシアから日本に輸入するために,現地の生産工程の品質管理状況,生産者の生計向上効果,および日本での商品化の可能性を調査した。ジャワ島のバンテン州および西ジャワ州においてサトウヤシ砂糖は,熱による滅菌処理および塵・虫の混入防止を施しながら伝統的な道具と工程によって生産され,生産者一世帯あたり月間10,000~30,000円相当の収入源となることが明らかとなった。加工業者への聞き取り調査で得られた現地での卸売価格を考慮して,サトウヤシ砂糖1 kgあたりの日本での販売価格は約2,000円となった。さらに日本でのこの砂糖の需要を増やす新たなビジネスモデルについてセミナー開催を通じて検討したところ,個人経営の洋菓子店において高価格の珍しい砂糖として使用することが有効だと判断した。女子大学生61名による味覚試験においてサトウヤシ砂糖は甘味と酸味では黒糖と比べて弱く,香りでは燻蒸風味,黒みつ風味が強いと判定された。日本市場でこれを定着させるためには,これらの味と香りを活用しつつ,夾雑物(特に灰粒子)の低減・除去方法の確立と非木材林産物の意義を消費者へ啓発することが必要と考えられた。