人間と環境
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原著
農耕地土壌における水溶性有機物に含まれる水溶性腐植物質量の特徴
加藤 拓大島 宏行前田 良之犬伏 和之
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2023 年 49 巻 3 号 p. 2-8

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抄録

土壌有機物中に含まれる腐植物質には様々な機能性があることが既存研究により示されてきた。本研究では水に溶ける有機成分(水溶性有機物)に着目し,これまで湖沼の水溶性有機物中の腐植物質分析で用いられてきたTsuda法を初めて土壌試料に適用し,農耕地土壌中の水溶性腐植物質を定量した。本研究で対象とした神奈川県内の農耕地土壌中の水溶性腐植物質量は,水溶性有機物量に比例することが本研究で初めて明らかとなった。また,水溶性有機物量は,作土層直下の次表層に比べて,概ね作土層で多く,水溶性腐植物質でも同様の傾向が認められた。水溶性有機物中に占める水溶性腐植物質の存在量は各地点で大きく異なったが,水溶性腐植物質割合は作土層と次表層との間で高い正の相関を示した。以上の結果から,水溶性有機物量および含有する水溶性腐植物質量は,土壌有機物総量に影響を受けることが示唆された。最後に水溶性有機物中に含まれる窒素は,主に水溶性非腐植物質中に存在し,水溶性腐植物質にはほとんど含まれないことが明らかになった。また,水溶性腐植物質中の炭素量と窒素量の間に強い正の相関が認められたことから,水溶性腐植物質構造内に存在する窒素化合物はある程度限定された化学構造物であることが示唆された。

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© 2023 日本環境学会
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