2021 年 2 巻 J2 号 p. 883-892
本研究では深層学習のうちLSTMに注目し,入力変数に対する感度解析を行った.対象事例として,寒冷地における降雨流出解析を取り扱い,降雨や蒸発散だけでなく気温・日射量などの各入力変数が流出流量の推定精度に与える影響を調査し,物理的関係性を考慮した議論を展開した.結果より,物理的に関係性が高い変数を入力として用いた場合に必ずしも精度の向上が図れるわけでないことが示された.近年深層学習手法による学習結果に対する物理的観点からの解釈が求められている.しかしながら,深層学習手法において物理的観点からの解釈を行う場合,少なくとも本研究のように入力変数と推定精度の関係性を明らかにしたうえで解釈を行わなければ,見当違いな解釈が得られる可能性がある.