2025 年 51 巻 3 号 p. 3-14
1980年にアメリカで成立したスーパーファンド法によって,浄化責任者の特定が難しい汚染サイトの浄化費用を得るために化学業界と石油業界に賦課し,その税金を主な原資とする信託基金が設置された。この税制度は1995年に失効したものの,2021年成立の「インフラ投資・雇用法」と2022年成立の「インフレ抑制法」によって復活した。本稿はスーパーファンド税の失効と復活をめぐる政策過程の考察から,ストック汚染の浄化費用負担に関する示唆を得ることを目的とする。まず,本稿の問題意識と目的を示したのち(第1章),スーパーファンド法の浄化責任規定と信託基金について概説する(第2章)。続いて,失効したスーパーファンド税の復活が長年見送られてきた要因を,大規模汚染サイトの浄化費用をめぐる議論と,アメリカ環境保護庁の対応から論じる(第3章)。さらに,スーパーファンド税復活の要因を「インフラ投資・雇用法」と「インフレ抑制法」の法案審議過程の分析を中心に明らかにする(第4章)。最後に結論として,ストック汚染の浄化費用を確保するためには汚染による影響を可視化し,浄化の必要性を社会に訴えるとともに,多層的な費用負担制度を構築することが不可欠であると示す(第5章)。