本稿の目的は、雨について歌った古典和歌の分析を通じて、雨に対する人間の向き合い方の一つの視点を提示することである。そのために、テキストマイニングの手法を用いて、計量的に雨の和歌の構造を分析した。その結果、それぞれの季節の雨とセットで好まれる風物や環境、あるいはそのなかでの人間の心情を読み取った。次に、雨についてよんだ和歌を通読・読解し、表現内容をより詳細に考察することで、雨と身体との関係に関して「雨-接触」「雨-眺め」「雨-想起」の3つのモデルを見出した。さらに、雨-自然物-身体-心情が一体となった一元的なあり方として「雨と自己の相互浸透的構造」という視点を提示した。