感性哲学
Online ISSN : 2759-3185
Print ISSN : 1346-7999
リバーシブル木琴づくりにおける感性
根津 知佳子芳賀 均森 健一郎
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2025 年 14 巻 p. 27-47

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抄録
本稿は、STEAM教育とふるさと教育を融合させた地域資源活用型学習の新たなモデルとして開発された『リバーシブル(裏柱振)木琴チャイム』の実践を、感性育成の観点から捉えなおすことを目的とする。この実践は、北海道中頓別町の地域産業(林業)に支えられているだけでなく、へき地・小規模校の抱える教育的課題を地域全体で解決しようとする文脈上に開発されたものである。このようなイノベーションを視野に入れた楽器開発においては、学校教育を核とした地域全体の抱える現代的課題や楽器の資材・流通などの巨視的な展望が不可欠である。本稿では、地域の課題発見から新たな社会価値の創出に至る過程をメタエンジニアリングにおける『MECIサイクル』を援用して概観した。その結果、従前の楽器開発とは異なる「Equity(公平・公正)な体験」という独自性を確認することができた。また、『リバーシブル(裏柱振)木琴チャイム』制作における感性育成について、『感性ハニカム』を援用して検討した結果、幼少期からの自然体験の中で培われた感性が制作や学びの基盤となっていること、子ども達と授業者との対話が素朴理解から科学的理解への架け橋となっていることが明らかになった。以上から、新たな教育モデルとしての可能性が示唆された。
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© 2025 日本感性工学会感性哲学部会
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