感染症学雑誌
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原著
肺化膿症における予後影響因子の検討
安藤 克利大国 義弘松沼 亮中島 啓岩崎 拓也浅井 Nobuhiro安井 大策三沢 昌史金子 教宏
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2010 年 84 巻 4 号 p. 425-430

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抄録
【目的】肺化膿症は早期診断と適切な治療によって治癒する感染症であるが,一方で治療に難渋し再燃や手術を要する症例も存在する.これらの治療難渋に関連する影響因子や予測因子を明らかにするため,当院における肺化膿症症例の検討を行った.【方法】2004 年6 月~2009 年5 月の5 年間に当院で肺化膿症と診断され入院加療を行った44 例を対象とし,65 歳以上の高齢者群(n=26)と非高齢者群(n=18),治療成功例(n=32)と治療難渋例(内科的治療抵抗性で外科的治療を要した症例,死亡例もしくは治療終了後1 カ月以内に再燃した症例:n=11)に分け比較検討を行った.併存疾患は,Charlson Co-morbidity Index(以下CCI)を用いて検討した.【結果】治療難渋例の平均年齢,CCI は,81.3 歳,3.45 と成功例の64.1 歳,1.25 と比較して有意に高かった(p<0.01).両群で男女比,病変部位,喫煙歴,初発症状,初診時白血球数とCRP 値に有意差を認めなかった.また起炎菌における嫌気性菌と好気性菌の割合,空洞病変の有無(65.6%vs 45.5%:p=0.30),病変の大きさ(59.78 mm vs 71.55 mm:p=0.14)も両群で統計学的有意差を認めなかった.一方,治療開始2 カ月後における病変部位の最大径縮小率は難渋例で24.9%と治療成功例の69.1%と比較して有意に低かった(p<0.01).
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© 2010 社団法人 日本感染症学会
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