感染症学雑誌
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原著
カルバペネム系薬剤に感性を示すIMP-1 型 Metallo-β-lactamase 産生腸内細菌
春日 恵理子松本 竹久金井 信一郎小穴 こず枝本田 孝行川上 由行
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2010 年 84 巻 5 号 p. 469-574

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抄録

近年,カルバペネム系薬に感性を示すカルバペネマーゼ産生腸内細菌の検出が世界的に増加している.2008 年5 月に信州大学医学部附属病院でimipenem(IPM)のMIC が<1 または2μg/mL を示すIMP-1 型metallo β-lactamase(MBL)産生腸内細菌を4 株検出した.これら4 株は,MicroScan の6.11J と6.12J パネル,およびKirby-Bauer のディスク拡散法を用いた薬剤感受性試験では全ての方法でceftazidime に耐性を示したが,MicroScan ではIPM およびmeropenem(MEPM)に感性であった.なお,ディスク拡散法ではIPM 感性,MEPM 耐性と判定され,同系統の薬剤であっても結果の乖離が観察された. 通常,Proteus 属菌などのインドールピルビン酸反応陽性菌以外の腸内細菌科の菌種においては,カルバペネム系薬のMIC が2μg/mL を超えることは非常に稀である.このようなカルバペネマーゼ産生菌株を見逃さないためには,カルバペネム系薬に対して中等度耐性や耐性の範疇に入らないとしてもMIC の上昇が認められれば,カルバペネム産生菌であることを疑う必要性がある.ディスク拡散法においても同様にディスク阻止円径の縮小が認められればカルバペネマーゼ産生菌を疑う必要がある. 非典型的なカルバペネマーゼ産生菌を見逃さないためには,広域セファロスポリン系薬に耐性かつ,カルバペネム系薬のMIC の若干の上昇,またはディスク阻止円径の縮小に着目することが検出の鍵である.加えて今回の検討では,非典型株においても,確認試験であるSMA ディスクおよび改良Hodge テストを用いることが有用であると評価された.

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© 2010 社団法人 日本感染症学会
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