感染症学雑誌
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原著
拡大サーベイランスに基づく長野県佐久地域の2008/09 シーズンにおけるインフルエンザ様患者数に関する検討
河村 真人神垣 太郎貫和 奈央橋本 亜希子玉記 雷太押谷 仁
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2010 年 84 巻 5 号 p. 575-582

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抄録

内科や小児科を標榜する病院や診療所に毎年多くのインフルエンザ様患者が受診をしている.しかし,それらのインフルエンザ患者報告数は定点医療機関からの情報に基づいているため,実際のインフルエンザ感染者の全体像を反映しているか不明である.そこで2008/09 シーズンの長野県佐久地域における非定点医療機関を含む医療施設でのインフルエンザ様疾患(ILI)の受診に関する検討を行った.その結果,ILI は内科や小児科を標榜する医療機関の他に耳鼻咽喉科にも認められた.さらに,全ての調査施設から推定されたインフルエンザ受診者は2,415 人であり人口の約1.14%,定点医療機関からのILI 報告数に基づく推定値は同疫学週で2,862 人であり人口の約1.35%であった.インフルエンザ受診者数の推定値は,本調査における推定値よりも定点医療機関の推定値が約18.5%高かった.定点医療機関からの推定値は医療施設の特性別に小児科病院1,020 人,内科診療所(主な診療科目が小児科以外)1,674 人であった.しかし,我々の調査によるインフルエンザ推定受診者数は小児科病院503 人,内科診療所(主な診療科目が小児科以外)741 人であり,定点医療機関からの推定値の約半数であった.これらの差は定点医療機関に,より多くのILI 患者が受診しているためであると考えられる.また,医療施設の特性において医療機関として内科だけを標榜する病院と診療所(小児科を有しない)が佐久地域では定点医療機関としては含まれていない.しかし,今回の調査では同カテゴリーの医療機関においてインフルエンザ受診者数の推定は967 人であった.さらに,耳鼻咽喉科診療所のインフルエンザ受診者の推定は71 人であった.インフルエンザ受診患者の推定値は医療施設の特性ごとに差を生じており,医療施設の特性ごとにILI による医療負荷を検討する必要性が示唆された.

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© 2010 社団法人 日本感染症学会
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