感染症学雑誌
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総説
慢性真菌感染症,最新の知見
掛屋 弘今村 圭文宮崎 泰可泉川 公一山本 善裕田代 隆良河野 茂
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2011 年 85 巻 4 号 p. 333-339

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抄録

深在性真菌症は,一般に高度な免疫不全状態患者に発症する感染症であるが,軽度の免疫不全状態に持続する感染症として慢性真菌症が挙げられる. カンジダの持続感染に関わる要因のひとつが,バイオフィルムである.特にカテーテル関連のカンジダ症では,バイオフィルム形成がその治療抵抗性に関わるが,どの抗真菌薬を選択するかが治療成功の鍵となる.アゾール系薬は,カンジダ浮遊菌には良好な抗真菌活性を示すが,バイオフィルム形成菌ではその抗真菌活性が低い.その機序としては,バイオフィルム菌内の薬剤排出ポンプの過剰発現が報告されている.一方,アムホテリシン B (AMPH-B) やそのリポソーム製剤 (L-AMB),ミカファンギン (MCFG) は,バイオフィルム形成菌にも高い抗真菌活性が期待できる.また近年,アスペルギルスもバイオフィルムを形成することが報告されている.アスペルギルスのバイオフィルムは,アスペルギローマの菌塊に観察され,慢性型のアスペルギルス症の病態に関与していることが示唆されている.さらに,カンジダと同様にアスペルギルスのバイオフィルム形成菌では,浮遊菌と比較してその抗真菌薬の活性は低くなるが,抗真菌薬としては AMPHB や L-AMB の効果が期待される.

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© 2011 社団法人 日本感染症学会
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