感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
原著
小児臨床検体由来インフルエンザ菌非b 型莢膜株に関する検討
朽名 悟星野 直深沢 千絵徳武 翔子奥井 秀由起澤田 恭子佐藤 洋子高橋 喜子石和田 稔彦
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 89 巻 2 号 p. 237-243

詳細
抄録

2000~2012 年の13 年間に小児臨床検体より分離されたHaemophilus influenzae 非b 型莢膜株(non-b 莢膜株)に関する検討を行った.13 年間に分離されたH. influenzae は全3,532 株で,その中でnon-b 莢膜株は57 株(1.6%),b 型莢膜株(Hib)は152 株(4.3%),無莢膜株(NTHi)は3,323 株(94.1%)であった.スライド凝集法で確認したnon-b 莢膜株の血清型はe 型(Hie)が29 株,f 型(Hif)が28 株であり,他 の血清型は検出されなかった.また,PCR 法の結果はスライド凝集法の結果と全株で一致した.これらのnon-b 莢膜株のうち52 株(91.2%)を気道由来株が占め,無菌部位由来株は血液由来のHif 1 株(1.8%)のみであった.薬剤耐性については,β ラクタマーゼ非産生ampicillin 感受性株が47 株(82.4%)と多く,βラクタマーゼ産生株は5 株(8.8%)であり,β ラクタマーゼ非産生ampicillin 耐性株(BLNAR)は1株(1.8%)であった. このように,non-b 莢膜株の検出頻度はHib よりも低く,検体由来の内訳は気道検体が多いNTHi と同様の傾向を示した.また,薬剤耐性についてはβ ラクタマーゼ産生株の頻度が高いHib や,BLNAR の頻度が高いNTHi の両者とも異なる特徴を有していた. Hib ワクチンの普及が進んだ諸外国では,NTHi の他にHie やHif による侵襲性感染症の増加が報告されている.今後は本邦でもHib 以外の血清型による侵襲性H. influenzae 感染症が中心となることが予想されるため,原因菌の血清型検査は必須といえる.同時に,市中におけるnon-b 莢膜株の浸淫状況の継続的なモニタリングも重要と考えられる.

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top