2017 年 91 巻 6 号 p. 924-929
序文:HIV/HCV 重複感染ではHCV 単独感染と比較して,線維化の進行が早く,発癌リスクが高い.線維化進展例や高齢者では,インターフェロン(interferon;IFN)治療成功例においても発癌リスクが高くなるため注意を要する.感染から30 年以上が経過した非加熱血漿由来製剤による重複感染者では,C 型肝炎関連による死亡数の増加が問題となっているが,その長期予後を示した報告は少ない.
対象と方法:2005年4月から2016 年10 月までの期間で広島大学病院に通院歴のあるHIV 感染者313 名のうち,初診時もしくは通院中にHCV-RNA 陽性を確認した重複感染者15 例(5%)を対象とし,HCV の治療歴と治療効果,長期的な予後について後方視的に検討した.
結果:対象例のうち12 例でIFN ベースの治療が施行されており,sustained virologic response(SVR)は 10 例(83%)であった.うち24 カ月以上の長期に渡り観察できた7 例(長期観察群)の年齢中央値は50 歳,治療終了からの観察期間中央値は118 カ月で,この間に再発例はなかった.未治療2 例を含むウイルス検出例が5 例(ウイルス検出群)あり,うち4 例でIFN フリーの直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals;DAAs)による治療が行われ,3 例でウイルスが陰性化した.肝癌の発症は長期観察群,ウイルス検出群とも1 例ずつあり,ともに遺伝子型は3a,アルコール摂取や糖尿病といったリスク因子があった.手術時の肝生検ではA3,F4 と線維化が進展していた.
結論:本院においてはHIV/HCV 重複感染者のHCV に対する治療成績は概ね良好であった.しかしながらHCV 単独感染と同様にIFN にてSVR が得られていても,線維化進展例やリスク因子保有例では肝癌の発症を認めていた.肝癌の早期発見のために,より注意深くスクリーニング検査を行うことが重要である.