鳥取県は,国土交通省が発表する土砂災害の発生状況で見ると,47都道府県中30位前後であり,土砂災害が少ないと認識されがちである。確かに筆者が研究対象としているような歴史記録に残る大規模な山崩れ災害事例(土砂量が 100万m3以上程度の崩壊や,人的被害の多い土砂災害)は確認されない。しかし,中小規模の事例は繰り返し発生している。誘因別に見ると,発生誘因の多くは台風等の大雨を誘因とした事例であり,地震を誘因とした事例は少ない。 本稿は,歴史資料(古文書,鳥取県史,市町村誌)調査,ヒアリング調査,現地調査を基に,主に江戸時代以降に鳥取県で発生し歴史に記録された土砂災害の事例を調査した結果を整理したものである。