感染症学雑誌
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原著
神戸西地域中核病院における小児侵襲性肺炎球菌感染症―肺炎球菌結合型ワクチン導入前後の変化,2002~2018年―
竹本 崇之松原 康策磯目 賢一岩田 あや山田 早紀宮越 千智常 彬
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2019 年 93 巻 4 号 p. 485-492

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抄録

本研究は,神戸市西地域中核病院における肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)が小児期侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の臨床的特徴と起炎菌の細菌学的特徴に与える影響を明確にすることを目的に,2002~2018年の小児IPDを対象に,診療録を後方視的に検討した.対象延べ症例は非髄膜炎86例と髄膜炎6例の計92例で,反復感染を3例(各例2回の菌血症)に認めた.研究期間をワクチン前期(I期,2002~2010年,63例),PCV7期(II期,2011~2013年,15例),PCV13期(III期,2014~2018年,14例)に分類した.各期のIPD発症数の中央値は各々7.0,5.0,2.8例/年で,I期比の発症例数はII期で0.71,III期で0.40(p=0.002)に減少した.入院数を分母としたI期比の発症頻度はII期で0.61,III期で0.32(p<0.001)に減少した.髄膜炎発症頻度はIPD全体の推移に比例した.IPD症例は2011年と2012年の間で1期的に減少した.この現象は,欧米諸国のPCV7とPCV13導入後に,2段階で減少したことと対照的であった.2種類のPCV導入時期の間隔やワクチン前期の血清型分布の違いが関連したと推察した.各期のワクチンカバー率はPCV7が78%,36%,0%,PCV13が95%,43%,0% と減少した.PSSPの頻度は27%,47%,57% と増加,PRSPは30%,33%,0%と変化した.II期,III期の主要な血清型は24F,15A(各4株)と15B,15C(各3株)で,日本の他地域や欧米で高頻度に分離される19Aは認めなかった.15A-ST63の4株は全て多剤耐性株で,抗菌薬適正使用による耐性菌の拡大抑制が重要である.本研究は地域中核病院で小児IPDの多数例を長期間観察した報告であり,既報の検討と合わせ重要な疫学情報を提供した.

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© 2019 一般社団法人 日本感染症学会
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