感染症学雑誌
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原著
COVID-19に対する抗体カクテル療法の臨床的検討
山田 一紀鈴木 聡谷野 洋子鈴木 啓子市川 貴也中嶋 雅秀丹保 亜希仁久木田 新黒田 祥平上原 聡人坂上 英充永島 優樹中村 愛高橋 佳恵斉藤 成亮佐藤 禄柿木 康孝
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2022 年 96 巻 5 号 p. 179-185

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抄録

【背景】COVID-19に対するモノクローナル抗体 カシリビマブとイムデビマブの併用療法である抗体カクテル療法は海外の第3相試験において入院または全死亡を有意に減少させた.本邦においても,重症化リスクを有する軽症または中等症Iの患者に対し,2021年7月19日にその使用が特例承認されたが,実臨床での詳細な臨床経過についての報告はない.

【対象と方法】地域医療圏においてデルタ株流行期である2021年7月29日から9月3日までに市立旭川病院に入院した発熱症状を有するCOVID-19患者において,抗体カクテル療法を施行した55例を対象に,入院時現症と血液検査所見,臨床転帰について解析した.年齢,SpO2,CRP,LDHにおいてはROC曲線によりカットオフ値を設定し検討を加えた.抗体カクテル療法の有効は37℃以下の解熱かつ追加治療を要しなかった症例と定義した.

【結果】患者背景は男性38人(69.1%),年齢,SpO2,基礎疾患数での中央値[四分位範囲(IQR)](範囲)はそれぞれ51[42.5,59](20~94)歳,97[95,98](93~99)%,2[1,3](1~5)個であった.肺炎ありは24人(43.6%)であった.薬剤投与日は発症日からカウントし中央値4日,観察期間は中央値6日であった.抗体カクテル療法は41例(74.5%)で有効であった.有熱期間の中央値は発症日から5.4日で,薬剤投与後の解熱までの日数の中央値[IQR](範囲)は1.5[1,2](1~4)日であった.カットオフ値では年齢≦72歳,SpO2≧96%,CRP<2.64mg/dL,LDH<220U/Lで有効オッズ比はそれぞれ,12.2倍,27.8倍,11.6倍,17.2倍であった.

【結論】重症化リスクを有するCOVID-19患者に対する抗体カクテル療法は速やかな解熱をもたらし,有効と考えられた.特に年齢,SpO2,CRP,LDHがその効果に影響を及ぼしていた.

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© 2022 一般社団法人 日本感染症学会
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